INTERVIEW<3>

pt05

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川北 スタッフ約240名のうち、女性スタッフが約180人だそうで。

湯浅 そう。「それだけ女がいたら、揉めるよね」って言われることもある。だけどね、揉めることも簡単やけど、揉めないこともそれと同じくらい簡単じゃん? スタッフ同士の揉め事話を聞いて、いつも思うのは、外野の人で片方だけの話を鵜呑みにしちゃう人は、直さなきゃいけない。私が親友の愚痴を聞く時も、相手の言う事を鵜呑みになんかしないし。両者から話を聞いてみると「なんだ、ただのすれ違いじゃん」って思う事が多いから。私だったらすれ違いそうな時、直接聞くんだけどね「アンタ、人がアンタの事を腹黒いって言ってたけど、それは本当か?」って(笑)。

 川北 (笑)。介護となるとそれぞれの家庭の事情を知ってしまう訳で、そうなると、どちらか一方に強く感情移入してしまうスタッフもいたりしませんか?

湯浅 うん。介護って、ご家族の方にとってはすごく大変で、この仕事をしてるとどうしても利用者さん側に立って「無下に扱われている」感じてしまうスタッフもいる。最近取沙汰されている高齢者への虐待なども加害者と被害者がいる訳だけど、加害者だって被害者なんだよね。

そんな時、「あなたたちのやさしさはわかる。だけど私たちは、裁判官ではないよ」という話はよくします。「私たちの仕事は、潤滑油。終わりの見えない家族介護を私達が終わらせてあげよう」って。

川北 善悪で話をすると難しくなりますよね…。

pt03湯浅 前に、一人のお嫁さんとエレベーターで鉢合わせたことがあるんですよ。お姑さんが入所中のお嫁さんね。「長い間、介護お疲れ様でした」ってお嫁さんに言ったら、その場に座り込んでわんわん泣いてた。「そんな風に言われるとは思わなかった。みんな、私がお婆ちゃんを無理やり入れたと思ってるに違いないって思ってた」って。そういうのを見ると胸が痛い。「みんな辛いんだよ!」って思う。介護は嫁がやって当たり前って世間には思われてるし、「頑張れ」って言われる事はあっても「頑張ってるね」って言われる事なんてないし。

私も同じような経験がある。経験があるから今がある。だから、経験を分析することが大事だって事も、スタッフには言ってますね。愛情深い人は深く愛された経験があるし、素直になれない人にはそうならざるを得なかった経験がある。分析は大事やね。みんな、色々あって今があるんだから。


 

 介護をとりまく情勢は刻々と変化し、保険制度の改正により2015年4月から新たなルールで施行されます。これは高齢者の増加、働き世代の減少、財政難の影響を受けたもので、介護保険の利用者にとっても介護業界にとっても大きな試練になるのではと見られています。未来を見越して、湯浅さんは社会的事業所『ゆかいな仲間たち』をオープンさせたのだそう。厳しい状況の中で頑張る介護スタッフの皆さんを少しでも応援できるよう、湯浅さん(理事長)と副理事長で1万円でも2万円でも売り上げを立てようと、開業。

当時に戻ったようなフレッシュな気持ちで、日々現場に立っているそうです。


 

川北 事業の最終到達地イメージはありますか?

 湯浅 『あいあい』はクーンって小さくなっていくイメージ。私は法律的なことはよく分からんけど、現場主義者やから「あぁ多分これからこうなるな」って予測は肌で感じられる。拡大はもう今止めなきゃって思うのは、自分なりの見通しやと思う。

川北 では、これからどんな見通しが立つのでしょう?

 湯浅 これからは、働ける人が少なくなる。そうなると、いくら事業を広げたって質のいいサービスはできなくなる。だから私が始める事業は、うどん屋でおわり。これ書いといて。今まで色々やってきたけど、私はうどん屋でやめる! 有限実行だから(笑)。あと、これから10年でスタッフ一人一人の力をぐんと上げます。「次は何を始めるんですか?」ってよく言われるんやけどね。

川北 介護・看護事業からスタートして、ヘルパー養成学校や、児童見守り教室、『夢古道おわせ』レストランの運営など、この14年間で色々してこられましたよね。

湯浅 私が築いたものって、100年に1回のチャンスを上手く利用できたんやと思う。副理事長というパートナーに恵まれ、どこまでも支えてくれる仲間に恵まれ、介護保険制度が始まって間もなくて。こんな事が次の世代にも同じように起こるかというと、なかなか難しい。

川北 でも、事業は継承していかなければいけませんよね…

 湯浅 私が好き勝手に築いたものを誰かに守らせることほど、しんどいことはないと思う。だから、きちっとケツを拭かないと。今、若い人に言ってるの、「アンタ達、これから何か事業を興すとしても、屋台くらいにしておきなよ」って(笑)。

 川北 後継者についてはどんな風に考えていますか?

 湯浅 本当は『あいあい』を他人さんの手にを委ねて楽になりたかったんやけど、どうも下の息子が『あいあい』狙いらしく……(笑)。確かに自分でやったことは、最後の最後まで責任持たなきゃいけないのかなって思う。長期の休みになるとバイトに来ています。一番遠慮なく叱れるのは息子だしね。だから息子とは毎日カンファレンス。ご飯の時に「座れ」って言ってカンファレンス。「またぁ?」ってよく言うとるわ(笑)。でも、これで良かったのかなって思う。

 川北 母の仕事を継ぎたいだなんて、やってこられたことが全て未来につながっているようですね。

 湯浅 良くも悪くも、生きた結果が全て仕事に出た気がしますね。子育てだけではなくね。例えば看護師時代に会った人が「あの時はありがとう」って介護を依頼してくれる事もあった。『あいあい』を始めてからの14年間は、本当に楽しかったよ。ただ、もし「14年前に戻って同じことをしろ」って言われたら、ゼッッタイに、嫌だ(笑)!

〜End〜

Chica’s VOICE

kawakita_profile このインタビューはほんの1/3ぐらいしか記載していません。介護事業以外のことや、時給800円の素晴らしい活動のこと、障害者雇用についてのエピソードや、入居者さんやスタッフとの関係性など。それに、独自に作られたマニュアルはすごく充実されていて、その出来はコンサルタントにも褒められるんだそうです。それなのに、「すべて見せてあげるよ~」って。なんと太っ腹!そのあたりは、湯浅さんご自身の言葉で聞いてほしいので、小さい講演会(飲み会?)を開催する予定です。興味がある方は楽しみにしていてくださいね。

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