INTERVIEW<3>
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川北 なるほど。『a trio』さんでは『しごと密着体験』や『三重チャレ』を通して子供たちに職業体験の場を提供しておられますが、子供たちに変化はありますか?
山口 私でも分かるほどに変わりますよ。もっと感じるのは保護者の方と先生方ではないでしょうか。あるご家庭では、食卓の会話が変わったそうです。「お父さんってどんな仕事しとんの? どんな所でやっとんの?」と仕事に興味を持ったそうです。そして「俺が行った会社はこんな所やったわ」と口数が増え、ハツラツとするんですって。自信に繋がったんでしょうね、勇気を出して挑戦してみて良かったなと。PDCAのサイクルが一周したのだと思います。
川北 なるほど!自発的に手をあげた子だからこそですね!まさに「体験」ですね!仕事の進め方を身につけたんですね。Plan(計画)→ Do(実行) → Check(評価)→ Act(改善)と。これを繰り返せばどんどん向上します。一方、受け入れ側はどうでしょう? 子供たちを受け入れることで何を得られたという声が集まっているのでしょうか。
山口 まず、子供たちが来ると場が華やぐそうです(笑)。それから受け入れることで、職場を整理整頓しなきゃ、何の仕事をさせようか、どんな風に説明しようか……、と考えるようになり、行動が業務の切り分けとなって、後々仕事改善・効率化へと繋がるのだそうです。あとは地域の保護者さんと接点を持つことができる。自社が町の人に愛され応援されるって、経営者としてこれほど嬉しいことはありませんよね。
川北 なるほど。そういった取り組みが、平成26年度文部科学大臣表彰に結実したのですね。それから人材を育成する上で大切なポイントとは何でしょう。現在人材育成にお困りの会社はとてもたくさんあると思うのですが。
山口 大事なことは、経営側が個人個人の能力を把握し正しく評価することだと思います。子育て中の女性、入社したばかりの若者、転職者、障害者……、人には色々あります。その方が持っている能力や意思と業務内容・お給料がフィットしていることが理想です。バランスが崩れるから人が去り、人が育たない。意思や努力が認められると、人はやりがいを感じ残業も厭うことなくバリバリ働くことができます。そうなると企業は強くなると思いますよ。産休・育休制度のある中小企業はまだまだ少ないですが、スキルを持った方が職場復帰できないのは勿体ない話ですよね。
川北 そうですね。最近では人材不足が深刻化していますし。
山口 人が足りない、採用できない、人が定着しない、そんな声がありますよね。なぜか。それは経営者さんとお話をすれば見えてきますので、そこをコンサルティングさせていただいています。
会社の良さを伝えきれていない場合もありますし、経営者さんのビジョンが不明確な場合もあります。そこを私たちと経営者さんで共有して一緒に改善する。だって採用される側から見れば不安じゃないですか、入社する会社のビジョンが不透明だと。しかしそんな本音は労働者側からは言えませんし、就職窓口の方も言えない問題で、私たちキャリアコンサルタントの出番だと思っています。
個人のビジョンと会社のビジョンが同じベクトルを向いた時、企業は強くなります。だから会社もビジョンが必要なんです。そして社員がビジョンを持っていないなら、作らせなきゃならないんですよ。
川北 「社員にビジョンを作らせるのが恐い。なぜなら心が決まり退職に繋がることもあるから」という社長さんの声も聞いたことがありますが、いかがでしょう。
山口 いらっしゃいました、「やめてくれ」とおっしゃる経営者さん。昔は「社員は信じて、ただ付いて来なさい」というスタイルも通用したんですよね。しかし時代は刻々と変わっています。旧態依然が未来に通用するかどうか。そこを丁寧に説明しご理解いただくということでしょうか。それから私たちキャリアコンサルタントが結果をきちんと出すということですね。企業も町も強くなるのが皆さんの願いですから。
川北 『a trio』さんは今後どのように進化されるのでしょう。ビジョンをお聞かせいただけますか。
山口 まず、現在『a trio』はNPO法人として活動していますが、今後はスタッフと直接期間の定めのない労働契約を結び、どんどん雇用し事業として成果を上げようということで動いています。
川北 人材を育成する『a trio』さんのスタッフ教育、興味があります。
山口 うちで人材を育成できなければどうする……、という話ですよね(笑)。今うちに来てくれている子達が今後どういう道を歩むのかぜひ見届けていただきたいですね。それから彼らが安心して働ける『a trio』にしていきたいと思っています。一方私は事業を任せて海外に出てなんて(笑)。
川北 そうなんですか?! 海外ですか!?
山口 森の中で森を見るより、離れて外から見た方がよく分かるでしょ。同じ問題に当たる人々の、別の解決方法を見て、力をつけてまた戻ってきたいと思っています。それには『a trio』が事業として結果を出すことが欠かせないわけです。三重はとても良い所で、人も素敵。だから「皆で三重を守るぞ!」という意気込みで夢を実現させたいと思います。
〜End〜
Chica’s VOICE
個人、企業、行政のすべてを巻き込み、コーディネートするというフレキシブルな活動は、NPO法人ならでは。そんな強みを生かして最大限の成果を上げようと活動されている山口さん。「私は三重県生まれではないけれど、三重が大好きだから」と語られ、新しい提案や活動を展開されていく原動力ってなんだろう?そう考えたときに浮かんだのが「視野の広い地域の母性」でした。すでにお孫さんがいらして、「もう、すごくかわいいのよ〜」という笑顔とは別に、今ある課題に対してとことん挑まれていく姿勢とパワフルさに、いろんな人がきっと巻き込まれていくんだと感じました。
「キャリア教育」と一言で言っても、行政だけではできないこと、学校だけではできないことがたくさんあります。そんな中で「学校の先生に全てを求めたらかわいそうよ」という言葉には、うわべだけではなく、現場と密に関わっている方だからこそ伝わる重いものがありました。キャリア教育だけではなく、女性の活躍支援もされている山口さんが理想とする社会が見てみたい!海外のことや現場の話をもっと聞きたい!是非、そんな場を設けてみたいと思いました!
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