都市の専業主婦から一転!名張に移住し農業ビジネスを展開
株式会社アグリー/代表取締役
井上早織(名張市)
愛媛県出身。大阪で専業主婦生活を送り、2011年に夫婦で名張市に移住。腹をくくって2,000万円の借金を背負い水耕栽培農家『アグリー農園』をスタートさせた。小松菜、水菜、フリルレタスなどを栽培し、地元を中心に東海・関西のレストランや小売店に出荷している。2014年に名張の地域情報誌『nanowa』を発刊。
またジュニア野菜ソムリエの資格を取得し、農家として命の尊さや食文化をお料理教室や地元小学校の授業などで説く。cookpadで美味しいレシピも公開中。
公式HP http://agree-nouen.com
cookpad http://cookpad.com/kitchen/10772441
facebook https://www.facebook.com/agreenouen
nanowa http://nanowa.net/
Message
今回のインタビューでお邪魔したのは、大阪からご夫婦で名張に移住し、農業を株式会社として始められた井上さん。井上さんと初めてお会いしたのは湯浅さん(第1回目のインタビュー参照)が講師を務められたセミナーです。質疑応答の際、とても熱心に質問をしていらっしゃったことが印象的でした。
それで興味が湧き、後日お邪魔してお話を伺ってみると、困難の壁をいくつも乗り越えて現在に至っているご様子。「長年に渡りお疲れ様で…」と思ったら、実は会社を始められてまだ1年余りだとか!現在は野菜の生産・販売だけでなく地域フリーマガジンの発行、料理教室、婚活イベントの企画まで、幅広い活動で地域を盛り上げていらっしゃいます。
そんな井上さんに、移住や農業について、そして一緒に働くスタッフや障がい者さんのことなど、いろいろなお話を伺ってきました。
INTERVIEW<1>
川北 今日はよろしくお願いします。『nanowa』という名張密着のフリーマガジンを発行されたばかりだそうですね(2014年12月現在)。
井上 そうなんです。名張のことをより多くの方にもっと知って欲しくて。私については全部この『nanowa』に書いてあるんですよ。フリーペーパーも、ホームページも同様に紹介してあります。
川北 「生きていくために農家を志した」と書いてありますね。今日は『三重の女性起業家.com』というサイトで井上さんをご紹介させていただきたく、農業のお話に限らず「起業は大変やった?」という話から「井上さんはどんな人?」という話まで、いろいろとお伺いできればと思っています。
井上 なるほど。まず私が何をしているかという内容については、この間、東海農政局で取り上げてくださった記事がわかりやすいです。局が定期的に発行している「食・農ぴっくあっぷ」という機関紙2014年9月号で『アグリー農園』を紹介してくださったんですが、私こんな感じだから、まとめるのに苦労したとおっしゃってました。(笑)
川北 なるほど(笑)株式会社アグリー(アグリー農園)は、「女性だからできる新しい農業のかたち」というのをテーマに、就労継続支援B型事業所『あぐり工房JOY』を立ち上げたり、地域の人と連携をしていると書いてありますがどんな感じですか?
井上 『NPO法人あぐりの杜』と連携したイベント、古民家を使った農カフェ構想、休耕田を活用したミツバチの楽園プロジェクト、障がい者の就労支援事業など、いずれそれが一つに繋がっていくんですが、そのためにもひとつひとつが独立した事業としても成り立つようにしていくというのが今の課題、重要なポイントですね。
川北 私も『NPO法人三重すまい・くらし相談室』の代表、『株式会社Eプレゼンス』の代表取締役とやっておりまして、人に簡潔に伝えられず、もどかしい気持ちはよく分かります(笑)。
井上 人から見ると、あれにもこれにも手を出しているように見えるかもしれませんが、実はこれぜんぶ繋がってるんです。まずは“ワクワク”を立ち上げて、その“ワクワク”を少しずつ形にしていく過程で、その時々の壁を乗り越えようとした結果が“今”のかたち。それは常に進化しています。
川北 なるほど。とは言え、農業に興味を持ったきっかけは、「悠々と農業をしているリタイア組をTVで見て」って『nanowa』に書いてありますね。
井上 そう。私自身、元々は自然農に興味を持っていたんです。大阪に住んでいた頃、『赤目自然農塾』に通っていました。「耕さない、虫も殺さない野菜づくりスゴーイ! 農業って哲学だぁ!」って。時を同じくして主人が農業に興味をもち偶然名張で水耕栽培をすることになり、二人で移住することを決めたんです。「えぇ~っ!農業ってこんなに儲からないんだ~!」と思ったり、夜な夜な電卓をはじいて「もうだめだーっ!」と思ったり(笑)。
川北 農業を始められる前は、「投資」についても掘り下げていって、世界経済や日本経済の仕組みが分かってきて仲間の中で講師的存在になった事もあるって以前にお話聞きましたが(笑)。
井上 そう、ストイックなタイプなんです。実は他にもストイックさからアメリカまで行って学んだ「メディカルアロマのセラピスト」という肩書もあるんです。
川北 そうなんですか(笑)? アロマセラピーという言葉をよく聞きますが、違いはどんなところにあるのでしょう。
井上 日本で主流になっているアロマセラピーはイギリス式のリラクゼーションを目的としたものに対して、メディカルアロマセラピーはフランスが発祥の地で医療として普及した歴史があるんです。今でもライフワークとして、迷った時や落ち込んだときは、メディカルアロマオイルでセルフセラピーしてます。(笑)
川北 それはすごい!ほんとに何でも極めて、そして、その行動力!「レメディ」とか聞いたことあります!お薬なんですよね!?
井上 日本の薬事法的にひっかかるかもしれないので「お薬」といっていいかは微妙ですが、現代医学が西洋近代医学に対して西洋医学の領域に属さない療法を総称して代替医療というんですが、昔はほとんどのお薬を植物から作っていたので、実は代替医療のほうが歴史は古く先代の知恵がたくさん詰まっている奥深い医療だと思うんです。近代医学は結果に対して対処する(切って取り除く)のに対して漢方やアロマはそうなった原因を心と結び付けて両方からアプローチして根本の原因と向き合う・・・・・・といったイメージかな。
病気は体だけでなく心とも密接な関係があり、その心にアプローチすることで病気になる原因と向き合うのがアロマだと思います。左脳的アロマ講座と右脳的アロマ講座とを開催してかなり掘り下げて勉強しました。最初は趣味でしたが、気が付いたら自宅の一室をサロンにして開業してました。今は自分が癒されたい立場にあるので人に施術はしていませんが・・・(笑)。
名張に来る前は都会派サラリーマンだった旦那さんと主婦だった井上さん。移住して2人で井戸を掘るところから『アグリー農園』さんは始まったんだそうです。とにかく日本一の小松菜農家を目指して日々奮闘しているそうですが、今では同じような水耕栽培農家さんに対して必要に応じて指導も行っているとのこと。もともと商売人の家で生まれ、小さいころから父親の経営を身近にみていて、そんな彼女の経験すべてを今活かして多くのスタッフを乗せた一つの船が安定航行できるよう舵をとっておられます。
川北 ご結婚前はどこかの会社にお勤めだったんですか?広告戦略等をしていたと前回お伺いしていましたが?
井上 結婚前は、父が通信販売の会社をやっていたので、そのまま父の会社に入社しました。規模でいうと年商200億ぐらいの会社でちゃんとした組織だったんです。その中で海外事業部、新規事業立ち上げ、ネットワークビジネス事業部、企画部署、マーケティング、クレーム係など、普通のOLだったらできなかった経験をさせてもらっていました。
川北 だからなんですね!「アグリー」のロゴやホームページ、商品のパッケージ等、すごく考えられているな〜って思ってビックリしていたんです。
井上 それがね、倒産したんです。わたしは父の会社を継ぎたかったので、倒産したときは、それまでの豊かな生活はもちろん生きがいも何もかもすべて失った気がして、何年もどう生きたらいいのかわからず彷徨っていました。その後母を自殺で亡くし、あの時が人生のどん底だったように思います。