1.形なき「Living Well」を追い求めて

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これからは目に見えないものがお金になる

 私どもの会社、株式会社アクアプランネットは「人々に生きる感動を提供し、心の豊かな社会の実現を追求します」という理念を掲げております。それは、せっかく生まれてきたこの人生、死ぬ時に「良かったな」と思えるような日々を皆が過ごすことができないだろうか、という思いが元々あったことによります。

 私がITベンチャーのスタッフとして社会人生活をスタートさせた頃、ちょうどパソコンが群雄割拠の時代でありました。1ヶ月もすれば新製品のコンピューターが陳腐化してしまう時代で、恐ろしいなぁと正直思っていました。一方で当時パソコンのインストラクターという仕事はなく、サービスは全てタダだったんです。その時、サービスはいずれ有料になって、目に見えるより目に見えないものの方がお金になる時代がやって来るんじゃないか、と思いました。加えて、仕事は「人に渡す」「人から受け取る」ことが重要視され、自分だけの作業で完結する事務処理は次第になくなっていくんじゃないかな、と漠然と考えていました。その当時、23,24歳の頃でした。

 

独立に際して決めた「起業三原則」

img15 社名の「アクアプランネット」の由来は、未来を暗示するという意味を持つ言葉「アクア」に自分が水瓶座(Aquarius)だった事を引っ掛けて「アクア・プランニング・ネットワーク」。未来(アクア)を提案(プランニング)して紡ぎ(ネットワーク)となり人々を幸せに導くお手伝いがちょっとでもできるように、という願いを込めて名前を付けました。

立ち上げ当初は1億・2億の企業だったので「何言ってんの」と思われていた感じだったんですけれども……(笑)。現在弊社には4つの事業部がありますが、根本は「人がより良く生きていくため、どんなマインドやスキルを身につけなければいけないのか」ということです。そこに販売するものが付いているイメージです。

 独立する前に、「起業三原則」を既に決めていました。それは、

  • 在庫を抱えない
  • 付加価値を売る
  • 値決めを自分でできる

 一つ目の「在庫を抱えない」と言いますのは、当時さまざまな製造業が苦境にあえいでいたニュースを目の当たりにしたことによります。先日、サンヨーブランドが消えてしまうと新聞に載っていましたが、製造業は淘汰し淘汰されながら資本力のある所が勝っていきます。「お金も経験もない私が何で勝負していけるのか?」と考え、「物ではなく人で勝負する」という答えに行き着きました。人間は歳を取るごとに知識や経験が積み上げられ、コンシェルジュのように高まっていきます。そんな風に年々ゆっくり進化していく人にフォーカスするために「在庫を抱えない」のです。

 二つ目の「付加価値を売る」と言いますのは、ブランドを売るということです。物が高い/安いという見方ではなく、手に入れることで自分のモチベーションがどれくらい上がるかを感じていただく。充足感を手に入れていただき、そこに物がくっついてくるイメージです。生きる糧となるような「自己重要感」をいかに作り上げていくか、ということが使命であります。

 三つ目は「値決めを自分でできること」。値決めを他の人にとられてしまうと、どんどんしんどい思いをします。それは会社員時代に経験しました。一方で値決めを自分でするには大きな責任を負います。例えば自分が1,500円のランチを売りたい時、内容・サービスともに良いものでなければいけません。これって結構しんどいことですが、安かろう悪かろうではない、他にないものを常に考えるようにしています。

 以上3つは創業から今まで変えずに貫いています。

 

現代人のLiving Wellの難しさ

 私が会社に勤め始めた頃は「君のホッチキス留めはきれいだね」や「君が淹れてくれたお茶は美味しい」などと誉められながら、少しずつ会社の文化に馴染んでいました。しかし今の新卒の子は入社早々高い能力をいきなり要求されます。「今の子は、今の子は」と言われますけれども、彼らは会社を好きになる前に大きなストレスにさらされているのです。

img14 また、現代日本人は安全に対する欲求や、食べて寝る欲求などが既に満たされており「何のために働くのか」「なぜ私は会社に居るべきなのか」という問いの答えが見つけ辛い時代に突入しました。世の中が生きにくい時代になってきていると思います。

 若者が「草食系」などと呼ばれ昔と変わったかのように言われていますが、それは生き方の形を変えているだけで、人間の中身は変わっていないと私は考えます。人間はずっと集団の中で生きてきましたので、集団の中でどう認められるかというのは本能が覚えています。例えば赤ちゃんが最初に覚える「笑顔」。自分に敵意がないことを周囲に示しているのです。

 今も昔も変わらず人が求めているのが「幸せに生きること(for Living Well)」。幸せとは、言うのは簡単ですがそれは「家族が健康であれば幸せ」か、「愛情があれば幸せ」か、中身が人によって全然違います。しかし幸せな人には共通しているものがあり、それが「自己重要感」ではないかと考えます。自己重要感とは、自分のことが大事に思えること、自分に自信を持っていること。これがあれば未来に向けて人生を切り拓いていくことができます。そんな体験づくりができる会社をやりたいと思っていました。

 

今を生きる子ども達に「勝ち癖体験」を!

 Living Wellのために、私どもは4つの事業部を作りました。まず創設したのがEDUCATION事業部。自分の未来をつくるための成功体験を推し進める事業です。成功体験とは「勝ち癖」のことです。18歳の子供たちが「私/僕ってすごい!天才!!」って思う気持ちがとても大事。若さって根拠のない自信を持つことですが、そんな若さって素晴らしいと思います。

img9 人は大きな失敗をして痛い思いをすると、精神的なトラウマになり挑戦から逃げるようになります。しかしその先に大きな成功があると、失敗はあくまで通過点へと変わります。だから大人は、子どもの失敗をいかに成功に導いてあげるかが大切です。「失敗は成功への通過点でなければならない」、私の中でこのような想いがあります。

 そしてBEAUTY&HEALTH事業部、FOOD事業部、LIFE STYLE事業部と派生しています。生まれてからまずは生きるための内面づくり(EDUCATION)、そして大人になり外面を少し変えるだけで湧いてくる「今日1日いいことがありそう」そんな特別な自分を引き出すBEAUTY& HEALTH、美味しいものに出合い「ここに来ると幸せを感じる、また来たい」という気持ちを引き出すFOOD、そして全部を補完するためのLIFE STYLE。ゆりかごから墓場まで、Living Wellのための4事業部となっております。

 ちなみに介護やサナトリウム(長期療養所)に関する事業も立ち上げたいと模索をしながら少しずつ進めている段階ではあります。ヨーロッパの介護は「安心であること」「受け入れること」「応えること」「尊厳を守ること」などが根底にあります。私どもも「死ぬ場所ではなく世の中に戻るための場所」としての事業を考えているのですが日本にはまだモデルケースがなく、ちょっと焦っています。会社を設立した時から「より良く死ぬ」をテーマに事業をやりたいと思っているのですが、正直いまだに踏み出せず寝かせている状態です。ただ、寝かせたり長く準備をしたりすることは必要だと思います。

 

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福政惠子様
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